2016年 06月 23日
モーリス・ブルグとの日々(1)
明日、アメリカに帰ります。
各公演にお越し下さったお客様、関係者各位、各地で熱演してくれた音楽仲間達と作曲家・上林裕子氏、マネージャーの西入さん、ブルグ氏の様々な手助けをしてくれた塩野谷くん、ご協力頂いたドルチェ楽器、ワーナーミュージックの方々、関わって下さった全ての皆様に心よりお礼申し上げます。
それにしてもこの充足感、なんと表現すべきか。
今回のツアーと、最新CD『World of Oboe』は、オーボエ界のレジェンドと言えるブルグ氏の同意なしには実現し得ない、私にとって『夢が形になった』こと。
御年78歳。氏から共演者や演目についてのリクエストはあれど、息子ほどの年齢の私のアイディアを拍子抜けするほどするりと理解し受け入れて、各地で見事な演奏を披露、独特なる足跡を残して、パリに帰って行った。
ブルグ氏のオーボエの素晴しさについては、今更書くまでもないだろう。
これまでパリで何度もレッスンを受け、ボストンでは10日以上もワカオ家に滞在してくれたり、それなりに長い時間を過ごしてきた。が、今回の日本ではリハーサル、コンサート、移動の繰り返しの集中的な毎日で、本番に向かうオーボエ奏者モーリス・ブルグの真骨頂をあらゆる場面で共有出来た。
ツアー中、隙間時間を見つけては、私も再び呼吸法のレッスンを受け、周りで色々と手助けをしてくれた学生達の演奏を聴きアドバイスをくれたり、ワカオ家10歳娘も長時間、氏の音楽の伝授を受けた。
伝えておくよ、残しておくよ、という尊いメッセージが込められているようで、掛け替えのない時間だった。
頑固かつ自我の強さは半端ない。反面、大きく公平な視線で物事を見ていて、たとえ自分の信念、やってきたことと異なるものであっても、これはと思えば認める懐の広さを併せ持つ。
本物の自信とはこれだろう。
このように柔らかで豊かな感性を、人はいくつになっても持ち続けることが出来るのだ。
ブルグ氏と過ごした音楽三昧の時間の中で、また生きてゆく元気がムクムクと湧いてきた。
たくさんの想い出と共に、今回の日本ツアーの一番の土産である。