2007年 07月 23日
ピアニスト レオン・フライシャーの人生
晴天の日曜日のマチネコンサートということもあってお客様もたくさん入っていた。
(写真はコンサート開演数時間前のシェッドを取り囲む芝生の様子)
本日のプログラムにあったベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》は、当初ピアニストのレオン・フライシャーが演奏する予定だったが、健康上の理由により数日前になって出演キャンセル。
代わりに、BSOタングルウッドデビューとなるピアニスト Marc-André Hamelinが同じ曲を演奏することになったのである。
ご存知の方も多いと思うが、レオン・フライシャーは1965年、世界の檜舞台で活躍していた37歳の頃、突然ジストニアという病気で右手の指が動かなくなってしまう。
以来、ピアニストとしては事実上の《引退》を余儀なくされたが、すぐに指揮者、教育者として名を上げ、左手のみの演奏活動も続けていたようだ。
(彼の詳しい経歴についてはここで)
そして数年前、約40年の時を経て最新の治療によって再び両手が動くようになり、2004年にCD《Two Hands》をリリース、両手でのコンサート活動も始めていた。
その彼がBSOにソリストとしてやってくるのを数カ月前にスケジュールで知り、楽しみにしていたのだがーー。
ピアニストの指が突然、動かなくなるというのはどういうことか。
壮絶な苦悩があったことは、想像に難くない。
《皇帝》を演奏しながら、今日、この曲をソリストとして演奏するはずだったレオン・フライシャーのこと、そして、世の中には予想だにしなかった病気や、事件、事故、災難・・・に見舞われ、今も苦しい想いをしながら、また、それをなんとか克服しようと懸命に生きている人達がたくさんいるのだろう、ということに思いを馳せた。
そういう方達のために、音楽家の自分にできることがあるとしたら何だろう、そういう苦脳の中にいる人達のためにこそ、届けるべき音楽があるのではないかーーというようなことを、今、自分の中で問い続けている。